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Special
Contents
人がつながる。
想いを繋げる。
2018年6〜7月にかけて、
西日本を中心に集中豪雨が発生。
河川の氾濫や土砂災害など各地では甚大な被害を受け、
その被災地域は九州、中四国など広範囲に及んだ。
組合員・利用者の日常を一刻でも早く取り戻すために、
全力を尽くした職員たちの姿を追った。
業務部 建物共済グループ
齊藤 圭
(2011年入会)
建物更生共済の保障を提供するための、全国的な支払査定基準や体制の構築、事務手続きの改善を担当。また、大規模自然災害に備えた損害調査・支払査定手法などの検討を日々行なうとともに、実際に大規模自然災害が発生した際には、都道府県本部で迅速に支払いを行うための対応方法や方針を示す役割を担っている。
事業企画部 建物査定グループ
溜谷 優樹
(2007年入会)
広島県内の建物更生共済の支払査定を担当。自然災害や火災などで被災した建物に対して、「支払事由に該当しているか」、「被害状況に対して適正な共済金はいくらか」といった査定を行い、共済金をお支払いしている。契約内容や罹災状況を踏まえ、一件一件しっかりと査定を行った上で迅速かつ適正なお支払いを実現するよう努めている。
大規模災害に備えるBCP訓練が
広島県本部の初動対応を
築き上げた。
昨今、大地震や大型台風など日本各地で多くの自然災害が発生しており、万が一の際に共済金を迅速にお支払いするためには、体制構築やマニュアル作成など、平時から有事発生に備えておくことが重要になる。その一環として全国本部・齊藤は、各都道府県本部に赴き大規模災害が発生したときを想定した「BCP(事業継続計画)訓練」を実施している。災害発生時の初動対応から共済金をお支払いするまでの一連の流れにおける各フローの課題を抽出し、各地域の実情に即した対応策を示すことで、有事の際の実効性を高めるためだ。
2017年、広島県本部で実施した訓練には、建物査定を担当する溜谷が参加。あらかじめ設定した大規模災害における被害想定に基づき、被害棟数の集計手法や、損害調査に必要な人員の割り出し・役割の確認、スケジュール立てなどの初動対応から共済金支払時までの具体的な対応策を二人で作り上げていった。
西日本豪雨による
甚大な被害が発生。
中国・四国地方を
襲った豪雨災害。
各本部と連携し、
災害に立ち向かう。
2018年7月、台風7号と梅雨前線の影響から西日本は豪雨に見舞われた。齊藤は甚大な豪雨被害の報告を受け、すぐに被災地域のある各本部に連絡。現地の状況把握に取り掛かった。その結果、豪雨の被害は広島県、岡山県、愛媛県など広範囲に及んでおり、計り知れない被害の全容に現地では混乱している様子が明らかとなった。JA共済連として災害対策本部が設置され、齊藤は被災した各県本部から次々に上がってくる情報や要望を整理し、全国本部がこれまで蓄積してきた過去の罹災対応の経験をもとに、損害調査方法や体制の構築にかかる相談に対して具体的な方針を示していった。
大規模災害を
想定した訓練が、
迅速な初動対応を
実現させた。
溜谷は、西日本豪雨の被害の大きさを現地で実感していた。降り続く豪雨のため、広島県では各地で通行止めなどにより交通機関が麻痺。特に被害の大きな地域は、河川の氾濫や土砂崩れが発生していた。溜谷自身も帰宅することができず、その日は上司の家に宿泊。一夜明けてからは一刻も早く組合員・利用者の日常を取り戻すため、初動対応に奔走した。県内各地のJAに連絡を取り、被害状況の全容を把握。そこから、県全体で予測される最終的な被害規模を見据え、損害調査体制や査定体制の検討を進めていった。前年に齊藤と実施したBCP訓練の経験や平時の準備から、体制作りは非常に迅速に行われたのだった。
請求件数は例年の約2倍。
“助け合い”が大きな力となる。
西日本豪雨発生から3日後、溜谷は集計した被害件数にもとづき損害調査体制や査定体制を編成。JAの職員、広島県本部の他部門の職員など、動員出来うる人員それぞれに役割や業務分担を指示していった。一方、齊藤は随時、被災状況に応じて修正した大規模災害時のマニュアル・資料の提供や、損害調査に必要となるタブレット型端末機『Lablet’s(ラブレッツ)』の手配などを行うことで、広島県本部の迅速な体制構築を後押しした。また、共済金の支払査定の段階では、支払いの判断が難しいケースも見られたため、溜谷は齊藤に全国本部の見解をヒアリングするなど、連絡を密に取り合いながら膨大な数の査定業務に取り組んでいった。
この西日本豪雨による共済金の請求件数は平時の広島県本部における2年分の件数に相当。しかし、溜谷を中心とした広島県本部の建物査定グループに加え、JA職員・県本部職員・全国本部職員が総力をあげて業務に取り掛かったことで、組合員・利用者への迅速なお支払いは実現した。それは、JA共済連の事業理念である“助け合い”が形となって現れた瞬間であった。
いつか来る大災害に備えて、
盤石な体制を全国に整える。
大規模な自然災害はいつどこで発生するかわからない。そのため、平時からの大規模災害時に備えた体制づくりが最も重要だと齊藤は言う。「もし、南海トラフ地震が発生した場合、全国各地で数十万件の被害発生が想定されます。これから先、どのような巨大災害が起きたとしても、被害に遭われて不安を抱えている組合員・利用者の日常を一刻も早く取り戻すことが私たちの使命。今回のような大規模災害の対応をJA共済連全体で共有し、より迅速に共済金をお支払いできるような体制を各都道府県本部・全国本部が一緒になって築き上げることで、大規模災害時でも“助け合い”の真価を発揮することができると考えています」。齊藤は組合員・利用者の暮らしを守るために、今日も全力で業務に取り組んでいる。
自ら経験して学んだことを、
次世代に引き継いでいきたい。
西日本豪雨では、迅速な共済金のお支払いによって溜谷のもとに多くの組合員・利用者から感謝の言葉が寄せられた。「しかし、実際には様々な課題も浮上しました。これらを一つひとつ解決するために、今回の大規模災害の実態に即したマニュアルの作成や研修会を実施することで、県本部としてより自然災害に強い組織にしていくことが現在の目標です。これまで広島県はあまり大規模災害に遭うことはなく、私自身も入会して初めて経験する大きな災害でした。そのため、今後はこの経験で得た知見を、次世代を担う後輩たちに引き継いでいくことが私の使命だと考えています」。溜谷は、今回の対応を振り返りながら、組合員・利用者の安心をつなぐ万全な体制作りに新たに着手している。